2004年9月1日水曜日

「浮力と他力」 浦幌町 太子寺 皆川隆信

 今年は、例年になく大変な猛暑でありました。皆様、体調の方はいかがでしょうか。

 ところで、皆様は、夏というと何を連想するでしょうか。暑い、すいか、花火、お盆など、人それぞれでありましょう。私は、夏というと海、そして海水浴を連想します。暑い日にただボケーッと海を見ているだけで大変涼しくなれます。また、暑い日に冷たい水の中を泳ぐことは、とても気持ちが良いことであります。しかしながら、私は水の中が大の苦手であります。つまり、カナヅチ、泳げないのです。小さい頃に小川でおぼれたことが原因なのでしょうか。水に顔をつけることにさえ恐怖心を抱きます。

 10年前に友だちと海水浴へ行ったことがあります。泳げない私は、当然浮き輪をつけて、波打ち際で小さい子どもにまじって遊んでいました。友だちは、いい年をして浮き輪をつけて遊んでいたら恥ずかしいので、泳ぎ方を教えてやると言ってくれました。私も少しぐらいは泳げるようになった方が良いと思い、友だちに手を支えてもらい、練習したのですが、足を少しバタバタとしたら、ブクブクと水の中へ沈んでしまう有様であります。友だちが言うには、泳げるようになるには恐れずに水に浮くことが大切なことだそうです。水に浮くには、自分のすべての力を抜いて、水がもつ、物を浮かす力である「浮力」[ふりょく]にすべてを任せればいいそうです。つまり、水に浮くということは、浮力のはがらき以外の何物でもないのであります。しかし、私の場合、水に対する恐怖心のせいか、どうしても身体に力が入り、水に浮くことが大変難しいことなのです。

 阿弥陀さまのはたらきは、この浮力のはたらきとよく似ていると思います。私は、自分の力ではお浄土に往生することはできません。私がお浄土に往生するには、自分の力やはからいを抜いて、すべてを阿弥陀さまにお任せすることです。すべての人を必ずお浄土に往生させたいという阿弥陀さまのご本願にすべてをお任せすることであります。

 この私がお浄土に往生して、仏にならせていただくことは、阿弥陀さまのはたらき以外の何物でもないのであります。この阿弥陀さまのはたらきを「他力」[たりき]、「他力本願」と言うのであります。

 この阿弥陀さまの「他力」のはたらきに、この私はもうすでにつつみこまれていたことを、お念仏を称[とな]えつつ、よろこびある人生を阿弥陀さまとともに歩ませていただきたいと思うことであります。

合掌

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