2005年9月1日木曜日

「「今」を生きる」 浦幌町 太子寺 皆川隆信

 まだまだ残暑厳しい日が続く今日この頃ではありますが、皆様いかがお過ごしでしょう。

 今年の天候は、異常というほど、寒暖の差が激しく、体調がおかしくなる程です。7月だというのに寒い日が続き、朝晩はストーブをつけていたかと思えば、8月に入ってからはいきなり猛暑となり、急いで扇風機をつけている始末です。寒ければ寒いと文句を言い、暖かくなればいいなあと思い、暑くなれば暑いと愚痴を言い、涼しくなればいいなあと願っています。私の本当の心の中を考えてみると毎日毎日が不平不満そして愚痴いっぱいの日暮らしであります。もう二度とは来ないこの「今」を誠実に謙虚に有難く生きているかといえば、そうではないなぁーと思わされることであります。

 有名な布教使の先生が百歳になられた時のことです。ある出版会社の記者がインタビューに来ました。ご高齢である布教使の先生は大変耳が遠く、付き人をまじえて対談をしました。出版社の記者が、「長生きの秘訣は何ですか」とたずねると、付き人が布教使の先生の耳もとで大きな声で、「長生きの秘訣は何ですかと聞いておられます」と叫びます。すると、布教使の先生は、「う~ん、よく食べてよく働いてよく眠ることかぁ」と答えました。こんな感じで対談は進んでいきました。最後の方で記者は、「今まで生きてきた中で一番良かったのは何歳の時ですか」とたずねました。付き人からこの質問を聞いた布教使の先生は、「あなたは今、何歳ですか」と逆に質問しました。記者はすぐに「43歳です」と答えると、布教使の先生は、「今まで生きてきた中で一番良かったのは43歳の時です」と答えました。

 次の日、違う出版会社の記者が来て、同じようにインタビューをしました。記者は、「今まで生きてきた中で一番良かったのは何歳の時ですか」とたずねました。布教使の先生は、昨日と同じように、「あなたは今何歳ですか」と逆に質問しました。「私は55歳ですが…」と記者が答えると、「私は今まで生きてきた中で一番良かったのは55歳の時です」と言いました。

 昨日は43歳が、今日は55歳が一番良かったと答えています。しかしながら、布教使の先生がおかしなことを言っているのではありません。「今」この時が、一番大切でかけがえのない時間であるということを言いたかったのです。

 不平不満、愚痴いっぱいの毎日が、この今が、この一瞬が、阿弥陀様のはたらきの中でありましたとよろこばせていただくことであります。

合掌