現代を生きる私たちを取り巻く環境は大なり小なり「不安」という問題と向き合わせではないでしょうか?
少子高齢化、倒産・リストラ・長引く不況、戦争・テロの問題、日本国経済の危機的状況、給与・ボーナス・年金のカット等々、問題は山積しています。
日本人の一年間の自殺者の数が三万人を超え、中高年の「うつ病」、年間、心療内科に通う人が多いと聞きます。
作家の五木寛之さんは、「不安」の中に生きていることは、取りもなおさず、「生きているという証[あか]しなのです。」と説かれ、その不安から何とかしなくては‥‥とエネルギーに変わって行く生き方‥‥そして至り届いた境地が「不安」から逃げるのではなく、不安と共に生きようという生き方でありました。
NHKスペシャルで、以前このような番組が放映されました。沖縄県の小さな島で、子だくさんの家庭に赤ちゃんが生まれ、そのことを地域を挙げて慶[よろこ]び、その家庭にとりたての野菜を届ける、心の温もり地域共同体。
また、「世界遺産の白川郷」の、八十数年ぶりの、合掌造りの屋根の修復・葺き替えを思い立ったおうちに対する「結[ゆ]いの精神」。
先祖、多くの人たちへの感謝の精神‥‥。
日本人が失いかけている、これらの精神が、21世紀に生きる私たちの道しるべではないでしょうか。
私どもの宗門の御門主さまは、「時代はいかように変わろうとも、お念仏の「み教え」は有り難く変わりません。お念仏は、私たちがともに人間の苦悩を担い、困難な時代の諸問題に立ち向かおうとする時、いよいよその真実をあらわします。」‥‥という旨、ご教示くださったことであります。
2004年2月16日月曜日
2004年2月1日日曜日
「耳をすまして‥‥」 足寄町 照経寺 鷲岡康照
人間の顔には、「食べる」・「話す」という二つの役目がある口が一つ、そしてただ「聞く」という一つの役目をはたす耳は二つ付いています。反対の方が合理的のようにも思いますが、西洋の哲学者の説によると、「話す倍ほど、聞きなさい」と、神さまがそのように人間を作られたそうです。ですが、ついつい「聞く倍ほど、話す」、つまり、自分の主張を通すことばかりを願うのが私です。
大海原をゆく船にとって、大切なものの一つに、無線による通信があります。ところが、その大切な無線を一時間に二回ほど、三分間ずつ、すべての船が一斉に中断するということが、電波法で定められていたそうです。その理由は、小さな船が遭難して発信しているかもしれない「SOS」、つまり「助けてください!」という電波を聞き漏らさないためだそうです。
今、出力の小さい電波で、必死に助けを求めている船があるかもしれない‥‥。
だから、世界中の大きな船も小さな船も、みんながピタッと通信を止めて耳を傾けている‥‥。
なんだか、想像しただけで胸が熱く、嬉しくなりました。
ところが、ふと現実に目を向ければ、朝から晩まで自分の思いを発信するばかりの、我[が]を通そうとするばかりの自分がありました。
それならば、船のように三十分ごとでなくとも、せめて一日に一度、発信器のスイッチを切ってみたいものです。そうすれば、聞き漏らしていた大切な声が聞こえてくるかもしれません。
仏さまの前に座り、静かに手を合わせる時を持たせていただくのは、「心の無線機」を停止するための貴重なひとときなのかもしれません。
大海原をゆく船にとって、大切なものの一つに、無線による通信があります。ところが、その大切な無線を一時間に二回ほど、三分間ずつ、すべての船が一斉に中断するということが、電波法で定められていたそうです。その理由は、小さな船が遭難して発信しているかもしれない「SOS」、つまり「助けてください!」という電波を聞き漏らさないためだそうです。
今、出力の小さい電波で、必死に助けを求めている船があるかもしれない‥‥。
だから、世界中の大きな船も小さな船も、みんながピタッと通信を止めて耳を傾けている‥‥。
なんだか、想像しただけで胸が熱く、嬉しくなりました。
ところが、ふと現実に目を向ければ、朝から晩まで自分の思いを発信するばかりの、我[が]を通そうとするばかりの自分がありました。
それならば、船のように三十分ごとでなくとも、せめて一日に一度、発信器のスイッチを切ってみたいものです。そうすれば、聞き漏らしていた大切な声が聞こえてくるかもしれません。
仏さまの前に座り、静かに手を合わせる時を持たせていただくのは、「心の無線機」を停止するための貴重なひとときなのかもしれません。
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