2007年3月16日金曜日

「教えの中に生かされてゆく日暮らし」 清水町 寿光寺 増山孝伸

 今年は暖冬と言われながらも季節は少しずつ移っていることが、風や土の匂いにも春の気配を感じるようになりました。

 親より先に子どもに亡くなられることは、親にとっては耐え難いものです。一人息子に若くして先立たれ、いつもお寺参りに足を運んでくださるお婆ちゃんがおられ、柔らかな笑顔を絶やさず熱心に聴聞されておられました。

 「お寺に来ると、亡くなった息子に会え、みんなとおしゃべりができるから、とても楽しくてしょうがないんだよ」

 先立つ人は後を導くと言います。亡き子をご縁として、仏さまへのご縁にあわれた方でした。

 一人この世に残された息子への思いをお婆ちゃんは「会いたい 会いたい 息子に会いたい」と、お布施の裏に書かれたこともありました。その方も、今は亡くなってしまいました。

 私たちには死んでも阿弥陀さまのお浄土に生まれかわり、再会できる世界が用意されています。

 きっと、今は、このお婆ちゃんも、お浄土での息子さんとの再会を喜んでおられることでしょう。

 自分を支えてくれる大きな命の流れを振り返ることも時として必要です。今、この世の中の流れにまどわされて、自ら迷いの人生を送っているのではないでしょうか?

 私たちは、「いのち」の恵み、ありがたさを感じながら、仏さまの教えの中に生かされてゆく日暮らしを送りたいものです。

 春のお彼岸です。皆さんの菩提寺でも彼岸会法要をつとめられることと思います。命のふるさと、お寺に足を運びましょう。