2005年1月1日土曜日

「五濁悪時群生海 応信如来如実言」 帯広市 帯広別院 輪番 立森成芳

 明けましておめでとうございます。みなさまおそろいで、新年をお迎えのこととおよろこび申し上げます。

 それにしても、昨今の騒々しさはどうしたことでしょう。テロ・報復・殺人・誘拐・拉致、そして政界・財界・警察の汚職と、耳目を覆いたくなることばかりです。「五濁悪時群生海」[ごじょくあくじぐんじょうかい]との『正信偈』[しょうしんげ]のお言葉は、今日の世相にぴったりです。

 五濁とは、劫濁[こうじょく]・見濁[けんじょく]・煩悩濁[ぼんのうじょく]・衆生濁[しゅじょうじょく]・命濁[みょうじょく]を指し、劫濁とは時代そのものが濁っていることで、戦乱・疫病・災害・飢饉などがしきりに起こって、まさに乱世の時代のことであります。

 見濁とは、邪悪な考えがはびこり、正しい道理が通らない状況をいいます。

 煩悩濁とは、自己中心的に物事を考え、順調にいけばむさぼりとなり、順調にいかなければいかりとなり、やがて愚痴に明け暮れる心の濁った状況をいいます。

 衆生濁とは、精神的・肉体的に衰弱して、無気力になって、苦悩ばかりが広がる状況を言います。

 命濁とは、生き甲斐を感じられなくなり、寿命が次第に衰えていく状況をいいます。命があっても輝きを失って、漫然と生きている状況でしょう。

 このようにして、人々の身も心も環境も、世界全体が濁りきった混乱の状況を呈していることを五濁といったのであります。

 争いの絶えない世界になるという劫濁。そして間違った考え方がはびこるという見濁。自己中心の我欲がはびこるという煩悩濁。人間の性質が低下していくという衆生濁。人間の寿命が濁って萎縮してしまうという命濁。これはまさに地獄・餓鬼・畜生の様相です。

 悪業[あくごう]は悪業を呼んで、ひたすら五濁の海に沈没[ちんもつ]していくところには、しょせん安らぎも歓[よろこ]びもありません。ただあるのは苦悩・苦痛・苦悶だけです。

 出口のない暗闇の世界を際限なくさまよう私たちに、「応信如来如実言」[おうしんにょらいにょじつごん] -まさに如来真実の言[ごん]を信ずべし- と、重大な方向を示されているのです。

 ひたすら如来のお言葉に会いなさい。耳を傾けて聞きなさいとのお諭[さと]しであります。

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