ひと昔前のバブル全盛期ほどではありませんが、大型の詐欺事件が報道されています。今でも時々こんな電話がかかってきます。「大変お得な情報がありますが、いかがでしょうか」のような類の話です。
そうした電話には「そんなに儲かるなら、他人に教えないで自分だけのものにしたらどうですか」と答えて断りますが、敵もさるもの、「それはそうですが、私ひとりだけでなく、皆さんにも儲けてもらって幸せになってもらいたいのです」と返ってきます。
人間の欲望というのは、際限がありません。なければないで欲しがりますし、あればあったでそれらをもっと増やしたいと欲が出ます。先の電話の話も、そうした人間の弱さをついた話といえますが、欲しい欲しいという貪[むさぼ]りの心が、自分自身を苦しめているのではないでしょうか。まさに、貪欲[とんよく]こそ、苦の原因です。
お釈迦さまは私たちに、貪欲をはじめ三毒の煩悩を取り除かなければ、さとりを得ることができないと諭されました。ちょうど田畑において、雑草を抜いておかなければ、実りを収穫することができないのと同じです。
しかし、困ったことに、雑草は抜いても抜いても下から生えてくるのと同じく、煩悩も次から次へとわきおきってきます。
そうした煩悩を断ち切ることができない人間の実相を見抜かれ、それでもなお「必ず救うぞ」と呼びかけ続けてくださるのが阿弥陀如来であることを、尊くありがたく仰ぎたいものです。
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