2007年7月1日日曜日

「お慈悲を生きる」 豊頃町 大正寺 高田芳行

 お電話ありがとうございます。こちらは十勝組と西別院テレホン法話です。

 仏説無量寿経には「仏さまのこころは大きな慈悲のこころ」と説かれています。

 親鸞聖人もご和讃に「お釈迦さまは慈悲のお父さん、阿弥陀さまはお慈悲のお母さん」と著されています。

 仏さまにおいて慈悲は、もっとも重要な意味を持つ言葉と言われています。

 慈悲の「慈」とは相手に楽しみを与えることで、「悲」とは相手から苦しみを抜き去ることです。この慈悲を体得して、相手を差別しないで慈悲をかけるものが「覚者」[かくしゃ]、すなわち仏であり、それを象徴的に表現したものが、観音菩薩、地蔵菩薩といわれています。

 やさしくいうなら、慈悲とは「相手と共に喜び、共に悲しんであげる」ことでありましょう。やわらかい言葉に置き換えれば「あたたかな心」ともいえましょう。

 昔、あるところに、勝円さんという慈悲深いお坊さんがいました。いつも仏さまの教えを熱心に勉強していました。

 風の強い寒い夜でした。いつものように経典を読んでいると、外から人の泣き声が聞こえて来ました。声を頼りに出て行くと、一人の男が丸裸で震え泣いていました。これを見て自分の着物を脱いで、その男に着せてやると男は「ありがとうございます。けれど、これだけでは足りません。もう一枚着せてください」と言ったので、今度は自分の肌着を脱いで、自分は裸になって着せてあげました。男は次に「あなたのところへ行って火にあたらせてください」と言いました。勝円さんは「いいですよ」と言い、手を引いて連れて行こうとすると「どうか背中に負おうってください」と言うから、男を負んぶして、寺へ帰って来ました。寺に入ると男は「早くこたつをしつらえて、それからあたたかいものを食わせてください」と言いました。勝円さんは、急いで火を起こし、こたつを作り、台所へ行っておかゆを作り始めました。おかゆが出来たので持って行くと、こたつの中にも、部屋の中にも男の姿は見えませんでした。すると本堂から「ここにいるぞ」と声がします。本堂にいくと、仏さまが、自分が脱いで男に着せた着物を着ていました。驚いた勝円さんが仏さまに礼拝[らいはい]すると、仏さまは「あなたの慈悲の心は、とても深いので感心しました。これからも、しっかり仏の教えを学びなさい。あなたは必ず仏になります」といわれました。


 勝円さんは仏さまの心を学び、実践した人でした。

 以前にある方から「慈悲を語るお坊さんはたくさんいるけれど、慈悲のこころを実践しているお坊さんは少ないように感じます」と言われハッとし、恥ずかしく思ったことがありました。

 私たち念仏者は南無阿弥陀仏のお念仏のみ教えを通して仏さまのお慈悲、あたたかい心を頂戴して日暮らししています。勝円さんのようにはなかなかいきませんが、仏さまからいただいたお慈悲、あたたかい心を少しでも周りの人に広げていくことが、お慈悲に生きることと理解し、お互いに出来ることから、ご一緒に実践していきましょう。

 今回の担当は、豊頃町、大正寺、高田芳行でした。

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